オスマー・リサーチ・フェローシップスポットライト:笹岡みちるさん
プロジェクト名「東京都心から ICU キャンパスに至る都市・郊外の勾配における環境ストレスが蚊の大きさに与える影響」
オスマー・リサーチ・フェローシップ(ORF)は、ICUの学生が夏休み中に独自の研究プロジェクトを行うための助成金制度です。2025年度のORFフェローの一人、笹岡みちるさん(フェロー当時は教養学部4年)にお話を伺いました。
JICUF:このプロジェクトを発案したきっかけは?
笹岡さん:まず私自身が蚊に刺されやすい体質で、夏になると大変な思いをしていることがあります。刺されやすいだけではなく、刺された後のダメージが大きく(痛い・かゆい・熱い)、私にとって蚊は憎き敵なのです。その敵のことを知ろうと思ったのをきっかけに、蚊の種の特徴、例えば体長などに影響を与える環境要因や環境ストレスの種類を明らかにする研究を計画しました。
具体的には東京都心部およびICUキャンパス周辺で見られる蚊を捕獲・記録し、それぞれの形態的特徴を収集・分析するとともに、生息環境や繁殖環境における環境要因を比較します。この研究を通して、東京都周辺に生息する蚊の種類と数、そして蚊の個体数増加や形態的特徴に影響を与える要因を把握することができます。
JICUF:助成金申請書には、多数の蚊を効率よく捕獲するために、オリジナルの蚊捕獲機を3Dプリンターで作成するプランも練り込まれていました。オリジナルの蚊捕獲機は予定通り完成しましたか?
笹岡さん:残念ながら、今回の研究期間中には完成できませんでした。元々はCDC(米国疾病予防管理センター)の蚊捕獲機を購入・使用しようと思ったのですが、単価が高い(1機69,000円)ため、それなら自作してみようと思いました。試作品を作り始めて、自作の捕獲機との対照実験をするためにCDCの過捕獲機を購入して試してみたところ、そもそもCDCの蚊捕獲機の機能が良くない、蚊を集めるために使用するドライアイスの持ち運びが大変なことなどが分かり、使用した3Dプリンターの限界もあり、部品をいくつか作ったところで諦めました。捕獲機がないので、自分で取りに行くしかありません。大きくて目の細かい虫取り網を持って、刺されないように完全武装をして、公園や野山に繰り出しました。これを「人囮法」と言って、調査員がおとりとなって調査地点に8分間立ち、吸血のために飛んでくる蚊を補集する方法です。
JICUF:フィールドワークは予定通りに進行しましたか?予想外だったこと、苦労したことは?
笹岡さん:ICUキャンパスをはじめ、葛西臨海公園や国営昭和記念公園など7か所を調査地として選び、昨年7月初旬から10月初旬にかけて調査を実施しました。はじめにお話しした通り、私は蚊に好まれる体質なので、蚊を集めるのに苦労はしませんでした。立川では8分間で140匹もの大漁を記録しました。が、調査のタイミングによっては全く成果がない日もありました(3ヶ月をかけた調査の後、雨が降らない時期には蚊がいないとの結論が出ました)。猛暑の中でのフィールドワークは本当に大変で、辛かったです。フィールドワークを続けるには健康管理が重要だと実感して、自己管理ができるようになったのはプロジェクトの副産物と言えます。
JICUF:フィールドワークの後は?
笹岡さん:一連のフィールドワークで集めたメス 913匹の個体調査を行いました。各個体の羽の長さを調べて、捕獲地点・時期などと併せて記録します。その結果、どのような環境によって生育に違いが生まれるのかが見えてきます。この研究の意義は、気温上昇やグローバル化に伴う人や物の移動の増加によって、日本に侵入する可能性のある危険で致死的な蚊媒介感染症の蔓延を防ぐことにあります。蚊の生息地、特徴、そして蚊に影響を与える要因を知ることで、研究者は蚊や病気の蔓延を阻止するためにどのような予防策を講じることができるかを判断し、多くの人々の健康と福祉に貢献することができます。
*右の写真と下の2点の画像は笹岡さん提供
JICUF:まとめと今後の目標は?
笹岡さん:自分で企画し、ゼロから始めたプロジェクトなので、試行錯誤を重ねながら改善していくこと、すべてのことに対して自分で責任を負うことを学びました。研究結果とは別に、これらもオスマー・リサーチ・フェローシップを通じて得た大きな収穫でした。フィールドワークを伴う研究の信憑性を担保するためには、最低でも2年間のデータが必要なので、今年もフィールドワークを続けています。また、去年のリサーチ・フェローシップを通して得られた仮説をラボで蚊を特定の環境下で管理し発育させることで、検証する計画を立てています。新たな研究結果に乞うご期待!
JICUF:笹岡さんの今後の研究から、どのような新しい発見が生まれるのか楽しみにしています!
