教職員助成金スポットライト:山口富子教授
教職員助成金スポットライト:山口富子教授
Public Interest Technologiesを通じた学生主導の日印連携学習
ICU社会・文化・メディアデパートメント、社会学の山口富子教授は、JICUFが2025年秋学期に募集した教職員向け助成金を受賞し、今年3月インドにてフィールドリサーチを実施しました。プロジェクトのタイトルは「Public Interest Technologiesを通じた学生主導の日印連携学習」、社会的包摂、環境の持続可能性、倫理的ガバナンスの実現に資するPublic Interest Technologies(PIT:公共利益のための技術)の考え方を取り上げ、インド・オディシャ州においてPITが地域課題の解決にどのように貢献しているのかを学生が主体となり調査するものです。
インタビューには山口先生とフィールドリサーチに参加した学生4名のうち3名(五十嵐あさひさん、高木嘉恵さん、木村愛さん)が参加してくださいました。まずは山口先生にプロジェクトの概要についてお伺いしました。
JICUF:プロジェクトの実施地としてインドを選ばれた理由は?
山口先生:もともと私自身が博士課程でのフィールドリサーチをインドで行った経緯があり、インドに馴染みがあり、ネットワークを持っていました。今回のプロジェクトでは、科学技術と社会の関係を実社会の中で多面的に学ぶことを重視しました。その中でインドは、急速な技術導入と社会課題が同時進行している非常に興味深いフィールドであり、学生にとって多くの学びの機会があると考えました。特に、今回訪問したCenturion University of Technology and Management(CUTM)は、大学の研究や技術開発を地域課題の解決に結びつける実践的な取り組みを積極的に行っており、ICUとは異なる文脈で「大学と社会の関係」を考えることができる事例として、また農業、ドローン技術、環境問題など、学生たちの関心とも接続しやすいテーマが多く、現地での観察やインタビューを通して、技術が社会の中でどのように受け止められ、利用されているのかを体験的に学べると考えました。
JICUF:フィールドワークは予定通りに進行・終了できましたか?
山口先生: 現地でのインタビューのスケジュールなど細かな変更はありましたが、全体として計画していた現地プログラムは予定委通り実施することができました。CUTMの先生方や学生の皆さんに大変丁寧にサポートしていただき、多様な現場を訪問しながら調査を進めることができました。ICUの学生は、事前に準備した質問項目をもとにインタビューを行うだけでなく、現地で新たに気づいた点について追加で質問したり、観察記録を取ったりするなど、柔軟に対応していました。予定された活動をこなすだけではなく、現場に応じて考えながら行動していた点が印象的でした。
JICUF:先生から見て旅行中の学生達の動きはいかがでしたか?
山口先生:インドを訪問するのが初めての学生もいたので、水や食べ物、環境が肌に会うかどうか出発前は心配したのですが、到着した初日から皆さんモリモリ食事を食べている様子を見て安心しました。滞在中、学生たちは非常に積極的に動いたと思います。また、単に「海外経験を楽しむ」だけではなく、「なぜこの技術が導入されているのか」「地域の人々はどう感じているのか」といった社会的背景にも関心を持ちながら行動していた点が、とても良かったと思います。グループごとに役割分担をしながら、インタビュー、写真撮影、記録整理などを協力して進めて、短期間でもチームとして成長していく様子を見ることができました。
質問4:フィールドワーク終了後の課題「教育教材として活用可能なロールプレイ・シナリオを作成する」では、どのような成果が出ましたか?
今回の課題では、現地で得た知見を単なる旅行経験として終わらせるのではなく、教育教材として再構成することを目指しています。学生たちは、インドで見た技術導入の事例をもとに、技術推進側、地域住民、行政、企業など、異なる立場の人々の視点を取り入れたロールプレイ・シナリオを作成するための、基礎データの収集と分析を実施しています。例えば、農業用ドローンや環境技術をめぐって、「効率化」や「持続可能性」を重視する立場と、「雇用」や「地域文化への影響」を懸念する立場との間で、どのような対話や葛藤が生じるのかを考える内容が含まれています。学生さんたちは、現地でのインタビューや観察内容を反映させながら、技術に対して単純な賛成・反対ではなく、多様な価値観が存在することが現地に行ったことがない学生にも伝わるような資料を現在作成中です。その活動の一環として6月7日から12日までCUTMの先生方が来日され、6月8日はSSRIセミナーを、6月12日には、PITの参加学生さんたちのプレゼンテーションとCUTMとICU(山口)による評価を実施しました。これら一連のプログラム終了後に、私とCUTMの先生でシナリオの作成を行い、2026年12月にプログラムを終了する予定です。
続いてインドでのフィールドリサーチに参加した3人に現地での感想をお伺いしました。
五十嵐あさひさん
「インドはテンポが早く、とても勢いがある国でした。物作りに関しては見た目は良くなくても実践的・実用的な物が多いと感じました。また、日本ではメールやテキストでのやり取りが中心ですが、インドでは「まず電話」「すぐ電話」の文化があって意外でした。」
高木嘉恵さん
「インドは自由で、みんな仲良しなのが印象的でした。人口が多いためか、日々の生活のために現在必要とされるもの(例えば太陽光パネル、電気自動車など)の技術開発と普及がとても進んでいると実感しました。」
木村愛さん
「サービスラーニングプログラムでインドに滞在したのをきっかけに、インドへの強い興味を持ち、このフィールドリサーチに是非参加したくて応募しました。インドには混沌の中に秩序があり、その根底には信仰心があると思います。前回滞在した地域とは全く異なる地域に滞在して、改めてインドの広さと途方もない側面を見る経験ができました。またインドに行きたいです!」
皆さん、ご協力ありがとうございました。
