教員のための語学プログラム (LPF) の学生インストラクターが報告会を実施
2025年6月25日、Language Program for Faculty (LPF) におけるStudent Instructors (SI) の教育実践とその研究活動の成果報告会がダイアログハウス2階の会議室にて開催されました。JICUFは教職員向け助成金を通じて本プログラムを支援しています。千仙永助教授によるリポートをご紹介します。
LPFは日本語を第一言語としないICU教員やそのご家族を対象に、日本語教員養成プログラムのICU生が日本語を教えるもので、学修・教育センター (Center for Teaching and Learning, CTL) 初のプログラムです。日本語を学びたい教員側のニーズと、日本語指導の経験を積みたい学生側のニーズに応えるものとして立ち上げられました。
2025年1〜2月にLPFを通して日本語指導の経験を積んだ5名のSIは、実践内容を振り返り、その成果を5月の国際大会で研究発表しました。開催地の韓国ではLPFでの実践経験を活かして、現地の教育研究者や学生たちとの交流を深める場を設けました。
上記活動から得たSIの学びをICUの次なる教育実践活動に還元すべく、今年6月に成果発表会を開催しました。発表会では①LPFの教材・カリキュラムの概要②韓国日本近代学会での研究発表③学会の日韓交流の一環として行われた韓国済州島の歴史文化探訪④済州大学校の日語日文学科の学生との交流会⑤ハンバッ大学校の教職課程 (日本語科)の授業参観⑥世和女子中学校の日本語授業見学、計6点のポスターを掲示し、お世話になった教職員の方々や、本プログラムに興味を持つ学生の皆さんに報告しました。ポスターセッションでの来訪者との意見交換は、SIを取り巻く状況を言語化・発信し、ここ数か月間、LPFを通して得た学びを再構築する機会にもなったようです。当日、それぞれポスターを担当した5名のSIの感想をご紹介します。
権田 梨心 (学部4年生)
韓国日本近代学会での研究発表は、私たちにとってこれまでLPFで一生懸命取り組んできたことを外に広めることができた、大変貴重な機会でした。発表を完成させるまでに紆余曲折があった上に、初めての学会参加に緊張した部分もありましたが、現地で他の研究者の方と交流をしたり、私たちの発表に対する意見や質問などもいただけたりして、とても勉強になりました。また、韓国で経験したことを、帰国後にポスターセッションとして学内で紹介することができたことも、自分たちの活動を改めて振り返る良い機会になりました。何より、参加者にLPFへの興味関心を持っていただけて、大変嬉しく思います。今回の経験を通して、これからも日本語教育、そしてLPFに関わり続けたいという気持ちをさらに強く感じました。
矢吹 愛(大学院2年生)
学会の2日目、私たちは済州歴史文化探訪に参加しました。そこでは在日済州人の生活や、済州島を取り巻く歴史について学びました。また、日本語と英語が伝わらない時にできた「言語の壁」によって現地の人と繋がる難しさを実感しました。日本語などの媒介語や通訳を通して学会参加者と学びを共有し合い、深められた経験から、言語教育が人と人を繋げる大事な役割を果たしていることを改めて実感しました。
ポスターセッションでは、LPFに受講者として参加して下さった先生方、またLPFの活動を見守ってきて下さった教職員の方々や日本語教員養成プログラムを履修する学生が参加してくださいました。発表をとおして、私たちが韓国の学会に参加して得られた学びを共有できたことが幸いでした。
林 佳乃(学部3年生)
韓国滞在の3日目には済州大学校で日本語を学ぶ学生約10名と交流会を行い、日韓の学生生活や言語教育について共有しました。学生が日本のポップカルチャーや文学などに関心をもっていることやアルバイトで日本語を活用していることなどがわかり、外国で日本語を学ぶことの意義を感じました。報告会のポスターセッションでは、参加者と韓国の学生の日本語学習の動機や韓国の言語教育環境などについて話し合い、外国語としての日本語教育についての考えをさらに深めることができました。
小田 麻祐子 (学部3年生)
4日目のハンバッ大学の日本語科教員養成過程の授業に参加した体験を通じて、私たちと同じように日本語教育を志す学生からおおいに刺激を受けました。今回のポスターセッションに向けて授業見学を振り返った結果、海外の日本語教育に対する理解が深まったように思います。
例えば、決められた教材を用いても工夫次第でより学習効果の高い授業を行うことは可能だと改めて考えることができました。また、韓国の学生が教科書を使いながら学習者のニーズに合った授業を考えていたことは、LPFで私たちが学習者のニーズに合った授業づくりを意識した経験と似通っています。さらに、韓国の日本語科教員志望の学生とのディスカッションを通じて、お互いが持っている共通の課題も明らかになりました。
学習者のモチベーションを維持することは、日本語を第一言語とする私にとっても、対象となる学習者と母語が同じ韓国の学生にとっても難しいと感じていました。私たちはたしかにLPFで多くのことを学びましたが、他にも学ばなくてはならないことや、探究しなくてはならないことがたくさんあることを再認識しました。ポスターセッションでは参加者の方々に多くの質問をいただき、LPFや韓国で学んだ内容に興味を持っていただけたことや、私たちの体験を発信できたことがとても嬉しかったです。言語教育メジャーの先生や学生との交流を通して、これからも日本語教育を学び続けていきたいという気持ちが強まりました。
中井 千恵(学部4年生)
5日目の世和女子中学校での日本語授業見学を通して、海外における外国語としての日本語指導と海外で日本語を学ぶ意義について理解を深めることができました。日本語指導では、「他者紹介ができる」という目標設定のもと、学習者の創造性と興味を反映できるように、似顔絵と紹介文を作る活動を展開していました。授業見学を踏まえ、海外で日本語を学ぶ意義は、学習者にとって言語多様性を促すだけでなく、異文化理解の機会にもなることだと学びました。ポスターセッションでは、参加者と教材として「絵」を使う効果について意見交換をし、韓国での学びを、今後のLPFの授業実践に活かす議論をすることができました。
千 仙永(Sunyoung Chun)助教授
本プログラムの目標達成と、SIが得た深い学びは、JICUFの助力なしには成し遂げられないものでした。貴重な機会を支援してくださったJICUFに心より感謝いたします。
